北斗塾ブログ

一般社団法人神戸北斗塾の塾長のブログです

北斗塾FAQ 171:問題解決の手順

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よくある質問171:現場で役立つ問題解決の手順を教えてほしい。

解答171:私が、初めて問題解決の手法を使ったのは、PDSサイクル」で、製薬会社の営業をやっていた時でした。「PDSサイクル」の本来の定義は、Plan(計画)、Do(命令)、See(統制)のサイクルで、経営者視点の理論だったそうですが、私は、PDSサイクル」をPlan(計画)、Do(実行)、See(振り返り)と勝手に読み替え、自分の販売実績の最大化のツールとして使っていました

PDSサイクル」を使っているうちに、Do(実行)は午前11時から翌日の午前10時までとし、翌日の10時から11時まで病院近くの喫茶店でSee(振り返り)を行なうと調子が良いと感じるようになりました。

Veevaなどの営業活動管理ツールなど無い時代でしたので、A3の方眼紙に80名ほどの顧客の名前と月初から月末までの日付を記入し、1回の顧客との面談で、自社製品の新規処方の確認が出来ればストライク、自社製品の処方依頼が出来ればスペア、処方依頼が出来なければガーターの記号を方眼紙に記入した上で、顧客の反応も方眼紙にメモしていました。優しい喫茶店のママさんが、ボトルではなく、シャープペンと消しゴムと定規をキープしてくれ、私のSee(振り返り)を支援してくれました。

そして、3か月に一度、3枚の方眼紙を見るといろいろなことがわかってきました。趣味などのお付き合いで人間関係があると思っている顧客でも、ガーターの多い顧客もいました。また、ガーターが多いと顧客に面会する頻度が低下する癖など、方眼紙が私に多くの気づきを与えてくれました。

その後、世の中では、PDCAサイクル」(Plan/Do/Check/Act)が主流になり、いつしか「PDCAサイクル」も、もう古いということで、「OODAループ」の時代という話も聞かれます。以下にフリー百科事典『ウィキペディア』による「PDCAサイクル」と「OODAループ」の概要を紹介します。

  • PDCAサイクル」は、第二次世界大戦後、日本において、統計的品質管理をウォルター・シューハートの弟子エドワーズ・デミングが日科議連にて講演した。この講演を聞いた日科議連の幹部がPDCAを提唱したとされる。PDCAサイクルという名称は、サイクルを構成する次の4段階の頭文字をつなげたものです。 Plan(従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する)、Do(計画に沿って業務を行う)、Check(業務の実施が計画に沿っているかどうかを評価する)、Act(実施が計画に沿っていない部分を調べて改善をするの4段階を順次行って1周したら、最後のActを次のPDCAサイクルにつなげ、螺旋を描くように1周ごとに各段階のレベルを向上させて、継続的に業務を改善する。
  • 「OODAループ」は、元々は軍事行動における指揮官の意思決定を対象としていたが、後にこれに留まらず、官民を問わずあらゆる個人の生活、人生ならびに組織経営等において生起する競争・紛争等に生き残り、打ち勝ち、さらに反映していくためのドクトリン、そして創造的行動哲学となった。OODAループは、観察(Observe)- 情勢への適応(Orient)- 意思決定(Decide)- 行動(Act)- ループ(Feedforward / Feedback Loop)によって、健全な意思決定を実現するというものであり、理論の名称は、これらの頭文字から命名されている。

今や、Plan・Do・Seeをグーグルで検索すると、株式会社Plan・Do・Seeという素敵な会社やPDCAサイクルの紹介ばかりで、プランニングサイクルとしてのPlan・Do・Seeは死語になってしまいました。

私は、敢えて 現場で役立つ問題解決の手法として、Plan/Do/Seeをお勧めします。 現場で使うためには、Plan/Do/Seeの手順がシンプルで部下と共有しやすく一番良いツールだと信じています。特に、90日サイクルでPlan/Do/Seeを回すのがベストです。ただし、現場の管理職が、「問題解決の手順(Plan/Do/See)」の重要性と使い方を上手く部下に理解させていないと、部下は、まず初めに「See(振り返り)」を軽視し、問題を特定しないまま「Plan(計画)」と「Do(実行)」を単純に繰り返すようになり、最終的には、「Plan(計画)」も軽視するようになり、いつも慣れ親しんだ「Do(実行)」を繰り返すようになります。こうなってくると、業績の改善や部下の成長は全く期待できなくなります。

問題解決の手順(Plan/Do/See)の中で、Plan(計画)は、現状分析(何が起きているのか?)、問題特定(問題・根本原因は何なのか?)、活動計画(何をすれば、問題・根本原因を解決できるのか?)の3つのステップが必要です。それでは3つのステップの詳細を例を使い説明します。

まず、「現状分析」について説明を加えます。現状分析とは、「問題解決に必要な情報を収集・整理・分析を行ない、現場で何が起こっているかを明らかにすること」と定義します。特に、どんな情報が必要なのかを問題解決のコツ(一人称・5W1H・数字)で考えます。そして、どこから・どうやって、これらの情報を収集できるのかを理解することも重要です。尚、必要な情報には、現状に関する情報だけでなく、あるべき姿に関する情報も収集する必要があります。

ボートフィッシングの例でお話しすると、「今日は、北風が強く、船が揺れたので、釣りにならなかった」では、When=今日、What=釣りにならなかった、Why=北風が強く、船が揺れた、の3点は記述されていますが、不十分です。「今日、私は、北淡路島沿岸で、風速8 mの北風が吹く中、魚釣りをしたが、船が揺れて、ロックフィッシュ3匹しか釣ることができなかった」と記述すれば、問題解決に必要な現状の情報(一人称・5W1H・数字)を収集できていると言えます。また、その日、北風の風裏になる神戸沿岸では風速4 mであったという情報も必要な情報です。なぜなら、風速4 m以下であれば快適に魚釣りを楽しむことが出来ますので、あるべき姿の必要な情報と言えます。

次に、「問題の特定」について説明を加えます。問題とは、「あるべき姿と現状とのギャップ」と定義します。通常、問題に落とし込むことができれば、解決策(計画)を立てることが出来ます。また、問題は、その組織やその組織で働く人々が関与できることで、最終目標と密接に関連していることに限定することが重要です。

先ほどのボートフィッシングの例でお話しすると、「今日は、北風が強く、船が揺れたので、釣りにならなかった」では、北風が強いことが問題のように記述されています。しかし、天候は、私が関与できることではないので、問題にはなりえないということです。それでは、問題は何なのでしょうか?問題は、北風の強い時も、北風の影響を強く受ける北淡路島沿岸で魚釣りを行ない、北風の影響を受けにくい神戸沿岸で魚釣りを計画していなかった「私のプランニング」に問題があったということになります。それでは、北風が強いのに神戸沿岸で魚釣りを選択しなかった根本原因は何なのでしょうか?それは、冬場に北淡路島沿岸部でメバルなどロックフィッシュを大漁に釣った成功体験は持っていますが、神戸沿岸では、あまりロックフィッシュを釣った経験がないので、北風が強くても、過去の成功体験にたより、結局、北淡路島沿岸に行ってしまう私のチャレンジ精神のなさに根本の原因があるようです。尚、根本原因の特定については、問題解決の手法(根本原因診断ツール)のところで詳しく説明します。

最後に、「計画の立案」について説明を加えます。 「計画の立案」で一番最初に考えることは、あるべき姿をフルセンテンスで定義した「ゴールイメージ」です「ゴールイメージ」は、Attractive(ワクワクする)かつ Achievable(達成可能)なもので、必ず、測定指標(あるべき姿に到達したかを判断する指標)を考慮する必要があります。 次に、「活動計画」は、主語を1人称にし、SMART すなわち Specific(具体的に)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(最終目標と密接に関連している)、Time bound(期限つき)であるかを考慮してください。また、「クロスSWOT分析」も考慮してもよいと思います。

先ほどのボートフィッシングの例でお話しすると、「次回のロックフィッシュ釣りに出かける場合、北淡路島沿岸で5 m以上の北風が吹く予報が出た時は、迷わず、神戸沿岸のロックフィッシュ釣りに切り替える。また、釣果(ゴールイメージ)も、凪の時に北淡路島沿岸で目標としている20匹ではなく、10匹として、ゆとりをもって安全第一で釣りに出かける。尚、いつもより15分早くヨットハーバーに出かけ、ヨットハーバーのスタッフに神戸沿岸のロックフィッシュのポイント(岩礁)を教えてもらう。また、まだ使ったことのないロックフィッシュ用のラバージグ(疑似餌)も試してみる」とすれば、チャレンジ精神のあるSMARTな活動計画になったと思います。

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明石大橋近く(神戸のヨットハーバーから20分)で釣った寒ブリです。必要な情報を収集・整理・分析し、問題・根本原因を特定し、活動計画を立てたので、初めて寒ブリを釣ることが出来たと自負しています。乗合船で、船頭に釣らせて貰った寒ブリとは、喜びも大きな違いがあります。(神戸近郊では乗合船でも寒ブリはそれ程釣れませんが…)

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